マージナル
今回紹介したいのはガガガ文庫の「マージナル」。
2007年の5月24日に発売し、全部で6巻まで出ています。
電撃文庫より出版されているブラック・ブレットの著者、神崎紫電のデビュー作ですね。
私自身がブラック・ブレットのファンということもあり、
最初の記事はこれかなと思い、選ばせていただきました。
ジャンルとしてはミステリー系になります。ライトノベルにしては少し特殊かも。
主人公は高校生の摩弥京也。彼はアングラサイト「ブラッディユートピア」の管理人をしています。
ハンドルネームはヴェルツェーニ。
京也が管理人を務めるブラッディユートピアは、拷問や殺人などについて討論したり、死体画像を公開するといった道徳的に問題のあるサイト。
そう、京也は殺人衝動を抑え込む精神異常者だったのです。
本作では
精神異常者であり、殺人を犯さない「マージナル(正常と異常の境界に立つ人間)」
精神異常者であり、殺人を犯す「オーバーライン(境界線を踏み越えたモノ)」
と定義していて、主人公はマージナルのようです。
簡単なあらすじは
主人公である摩弥京也が、チャットルームで「エクスター侯爵の娘」というハンドルネームの人間と話していると、その相手が連続殺人鬼であることが判明します。
そしてひと悶着あった結果、京也は連続殺人鬼であるエクスター侯爵の娘から命を狙われる・・・・・・というのが物語の導入部になります。
本作、マージナルの魅力はなんといっても
ハイスペック人格破綻者、摩弥京也の存在に尽きます。
語り部である京也の価値観が変わっていることもあり、物語全体が退廃的というか、既存の作品とは一線を画すものに仕上がっています。
特に変わっているところは、探偵役にあたる主人公も精神異常者という点。
普通の小説とかであれば、主人公は多かれ少なかれ正義の一面を持っているのですが、京也は思考や価値観が悪人そのものです。冒頭から人格破綻者全開です。
かといって完全な悪役かと言われるとそうでもないんですよね。
殺人衝動を抱えていながらも人を殺さないように、必死になって自分を抑えていますし、軋轢を生まないために他人を遠ざけています。
気遣っているんですよね、他人に対して。
本当にどうしようもない人間であれば、ここまで自分を押し殺したりはしません。
それこそエクスター侯爵の娘のように欲望の赴くまま人生を謳歌すると思います。
倫理観は破綻していますが、根っこの部分は善人。
そんな摩弥京也を一言で例えるなら「悪党になれなかった悪党」でしょうか。
色々と突き抜けた性格の京也ではありますが、幸せになりたいという気持ちが見え隠れしていることもあってか、不思議と感情移入できてしまいます。
「マージナル」は隠れた名作です。
オススメなので、是非読んでみてください。